T o 記 D o 記 見た映画、読んだ本、旅をして、ときどき感じたこと 2004年1月- To記Do記:最新 2004年1月- 2003年7月- 2002年12月- 2002年4月- 2002年1月- 2001年10月- 2001年7月- 2004-12-10 本「夕凪の街 桜の国」 2004-11-03 映画「誰も知らない」 2004-10-18 本「ダーリンは外国人」 2004-09-21 映画「スウィングガールズ」 2004-09-05 映画「華氏 911」 2004-07-28 映画「おばあちゃんの家」 2004-07-01 本「啄木鳥探偵處」 2004-06-18 映画「上海家族」 2004-05-11 本「日本奥地紀行」 2004-04-07 演劇「太鼓たたいて笛ふいて」 2004-03-12 映画「ミスティック・リバー」 2004-03-03 映画「シービスケット」 2004-02-21 本『フジ子・ヘミングの「魂のことば」』 2004-01-25 BOOK-2003年-勝手にベスト5 2004-01-19 CINEMA-2003年-勝手にベスト5 2004-01-10 映画「美しい夏キリシマ」 2004-12-10 本「夕凪の街 桜の国」を読みました。 ヒロシマで母と暮らす女性は、仲の良い同僚たちと小さな職場で働いている。 澄んだ色の表紙には、夕焼けの道を歩く主人公がいる。右手に靴を持ちながらも裸足、時代を感じる電柱、桜とツバメ……、なにが始まるのだろうとワクワクする。 「お前の住む世界はそっちではないと誰かが言っている」 (人を愛したことを)「姉や妹やみんなにすまんと思わんですむかも知れん」 「生きとってくれてありがとうな」 研ぎ澄まされた言葉に、時を越えて現在と過去が繋がる。 登場人物の名前、ヘアスタイル、服、コマ割り、ネームにもみんな--当たり前だが--意味があり、著者はきっと内臓がひっくり返るような日々の中でこれを描いたろう。 p35で終わりとも言える。そこから始まるとも言える。 著者が「あとがき」でこう言っている。 「夕凪の街 桜の国」こうの史代 双葉社 2004 2004-11-03 映画「誰も知らない」を見ました。 母と4人の子どもが小さいアパートに引越してくる。母は子供たちを学校に行かせない。それどころか、長男以外は外にも出さない。弟妹の面倒は12歳の長男がみている。ある日、母はメモと金を残し男のところへ行ってしまう。やがてお金はなくなり…。 学ぶ機会のない子ども(ヒト)は、批判も展望も持つことができない。母親に刷り込まれた「生きる枠」の中に閉じ込められたままだ。 周囲のオトナはどうすればよかったのか、取り巻く社会はどんなことができたのか。 この話は、実際に起きた事件を元にしている。1988年、母親から(もちろん父親からも)置き去りにされた4人の子どもたち。下の子どもたちはおむつが取れないほど幼く、長男の友だちと称する少年二人の存在もあった。 柳楽優弥さんは、カンヌ国際映画祭で絶賛され史上最年少の14歳で最優秀男優賞を受賞した。 悲惨な状況ばかりが続くのに、なぜか澄んだ明るさがある。静かに密かにもしかしたらこの瞬間も続いている“誰も知らない”日常を“知る”ためにも、これは見てよかった映画の一つだ。柳楽優弥さんの眼に出会えたことも。 「誰も知らない」 2004-10-18 本「ダーリンは外国人」を読みました。 日本人の女性と外国人の男性が結婚した。その生活の中で起こる出来事を妻の視点から描いている。しかし、国際結婚がどうだ、という話ではない。 夫は日本語ペラペラで、好きな日本語は「時期尚早」などと宣う。妻は、夫の目の彫りの深いところを「渓谷」と呼び計測したくてたまらない。 結婚してどんな暮らしになるのかは『外国人と結婚するか日本人とするかという事ではなく、お互いの性格がどこが似ていてどこが違うかにある』と著者は言っている。 男性の優しさ、ユニークな部分、研究熱心なところをよく描いている。 「読後さわやか」を味わえる。 「ダーリンは外国人」小栗左多里 メディアファクトリー 2002 2004-09-21 映画「スウィングガールズ」を見ました。 東北のどこかの高校。暑い夏に補習授業を受けている生徒たち。ひょんなきっかけでビッグバンド・ジャズをやることになる。ほとんどが補習を逃れるために嫌々ながら参加するのだが……。 主役級の出演者たちは、サックスもトランペットもトロンボーンもピアノもドラムも、シロウトから出発して約4か月でほんと〜に演奏しているのだという。しかも「A列車で行こう」「ムーンライトセレナーデ」などスタンダードジャズナンバーがいっぱい。一曲だけ選ぶならやっぱり「シング・シング・シング」か。それとも「What
a wonderful world」か。 彼らを熱く燃え上がらせていったものは何だったのだろう。そこを考えるのが楽しかった。夢中になるその原動力の秘密が分かれば、人は凄い力を出せる。 「スウィングガールズ」 監督 矢口史靖 2004-09-05 映画「華氏 911」を見ました。 2000年の大統領選挙から、ブッシュの足跡を克明に撮り続けるムーア監督。ブッシュ大統領とビンラディン一族との奇妙で親しい関係。9.11事件とイラク戦争の関わり。 ディズニーの配給拒否、ブッシュ政権による上映禁止運動等をクリアして、全米公開された。 「議員の息子で派兵されたのはまだ一人だけです。あなたのお子さんもいかがですか?」とムーア監督は議員たちに兵隊募集パンフを渡そうとする。議員たちは、よけながら逃げるように去っていく。この映像は圧巻だ。 もちろん、ものの見方は種々ある。ムーア監督がすべて正しい訳はない。だが、報道されない部分に光を投じてくれたことは確かである。 「華氏 911」 FAHRENHEIT 9/11 監督 マイケル・ムーア 2004-07-28 映画「おばあちゃんの家」を見ました。 母親と二人でソウルに住む7歳の少年。ある日、母が仕事を見つけるまでの間、田舎のおばあちゃんの家へ預けられる。少年は、口が利けないし読み書きもできないおばあちゃんをバカにする。触られることもいやがる。 缶詰とコーラとゲーム機で暮らす少年。やがて、持ってきた食べ物は無くなり、ゲームの電池も切れる。 夜のトイレが怖くて、おばあちゃんに来てもらい「見るな!」と言い「行くな!」と言う少年。 長い間かわらず流れる村の風は、少年を包みこんでいく。 イ・ジョンヒャン監督は、「おばあさんを自然そのものの姿として描きたかった……口を利けないという設定にしたのも『自然』は言葉を話さないから……」といっている。 じわじわじわと引き込まれ、見ている側も緑の山ふところに抱かれる。 「おばあちゃんの家」 The Way Home 監督 イ・ジョンヒャン 2004-07-01 本「啄木鳥探偵處」(きつつきたんていどころ)を読みました。 石川啄木がホームズに、ワトソン博士には金田一京介。東京下町を舞台に、生活苦から探偵業を始めた啄木を金田一の視点から描く。
タイムトラベルで歴史の現場に居合わせたかのような気がしてくる。『知ってる、知ってるよ! <喜乃床>行ったよ! 階段が急だったよ!』『ローマ字日記の原本 !? 見たい、見たい!』と叫びだしたくなる。 末國善己さんが、“啄木を探偵役にした理由”“都市と群衆の関係を観察し、歌の題材として取り上げていく啄木のまなざしの確かさ”などを解説している。この部分も楽しい。 「啄木鳥探偵處」 伊井 圭 東京創元社 1999 2004-06-18 映画「上海家族」を見ました。 父の浮気で離婚した母は、高校生の娘と共に家を出る。その15歳の娘の目から見た、今の上海を描く。 母親は小学校教師をしている。しかし、男性上位の社会では、離婚すると住む家も食べるものも十分ではなくなってしまう。母子は実家に行くがとても狭い上、大家族だ。家を出るために思いついた方法は、好まない人との再婚だった。 古い家族の習慣や世間体に縛られたやりきれない部分を含みながらも、つぶされた洗面器を笑い飛ばしてしまう親子の明るさ、力強さに救われる。 監督が、ある高校生の作文を読んだことがこの映画のきっかけだった。母親が離婚、再婚、離婚をくり返していくといった内容だったという。 「上海家族」SHANGHAI WOMEN 監督 ポン・シャオレン 2004-05-11 本「日本奥地紀行」を読みました。 1878年(明治11)イギリス人の女性(47歳)が東北地方、北海道地方を旅した克明な記録。 まず、荷物が面白い。
通訳兼案内の日本人を募集し、面接し、決定する。「伊藤」という名の男を選んだ経過も興味深い。 宿屋の「障子は穴だらけで、しばしばどの穴にも人間の目があるのを見た」という記述には、笑ってしまう。 自分の知っている文化だけが高いと思っている傲慢さや、「小さくて汚くて醜い日本人」という描写の多さには、がっかりする。 しかし、それを引き算しても読む価値はある。 日本を知るに連れて著者の日本観は変わってくる。
「日本奥地紀行」 イザベラ・バード 平凡社 1988 演劇「太鼓たたいて笛ふいて」を見ました。 『放浪記』で有名な林芙美子を描く。 1935年(昭10)芙美子32歳のときから1951年(昭26)47歳で亡くなるまで、飛んで、歌って、跳ねて、喋る。 客席最前列にくっついて置かれたピアノに朴勝哲さんの指が躍る。ジャズあり、クラシックあり・・・出演者皆さんの歌声もモチロン生! 大竹しのぶさんは、わがままでありながら魅力的で力みなぎっている可愛い芙美子になる。その演技も好きだが歌も見事で、ますます素敵な俳優。 新宿の紀伊國屋サザンシアターの客席は超満員。通路にもギッシリの補助いすが並ぶ。役者と客席のあまりの近さにびっくりした。距離ゼロといってもいいくらい。 劇中の花火(爆竹・煙玉)にはもっと驚いた。爆竹の一つが長く燃え煙がいっぱいに広がった。薄い煙幕が辺りを覆い、火薬特有のにおいがやってきたとき、わたしの席も舞台上の一部になった感じがした。 劇中歌で一番好きなのは「ドン」。もう一度見たい聞きたいとおもう。 「太鼓たたいて笛ふいて」 作 井上ひさし 映画「ミスティック・リバー」を見ました。 ボストンの貧しい地区で遊ぶ3人の少年。うち1人が偽警官に誘拐される。 悲惨な出来事を丁寧に丁寧に拾い、人間が持っている弱さをえぐり出す。 ショーン・ペンは文句無し。ワタシ的には、脆い心を演じきったティム・ロビンスに一票。ケビン・ベーコンも捨てがたい。 第76回アカデミー賞主演男優賞はショーン・ペン、助演男優賞はティム・ロビンスだった。 「ミスティック・リバー」Mystic River 監督 クリント・イーストウッド 映画「シービスケット」を見ました。 1930年代のアメリカ。自動車販売で大富豪になった男、カウボーイの調教師、大恐慌のせいで両親と別れ草競馬のジョッキーになった男。この3人がサラブレッドに出会う。 大事なレースを前に大変な事故があったりするのだが・・・。 レースシーンがスゴイ。騎手の眼から見える光景がド迫力で続く。正真正銘の超一流騎手たちが演じているのだという。 トビー・マグワイアのやんちゃな目がいい。 「シービスケット」Seabiscuit 監督 ゲイリー・ロス 2004-02-21 本『フジ子・ヘミングの「魂のことば」』を読みました。
東京芸大卒業後、国籍が無いため避難民としてドイツ留学。1969年、リサイタル直前に風邪で聴力を失うなど、波風に揉まれる生き方をしてきた。 フジ子・ヘミングさんの「奇蹟のカンパネラ」を聴くと、ピアノが声を出して歌っている気がする。 手紙の直筆(本物)を見る機会があった。流れるような文字とそこに生まれる空間の美しさは、絵画を見るようだった。 『フジ子・ヘミングの「魂のことば」』ヘミングフジ子 清流出版 2002 2004-01-25 BOOK-2003年-勝手にベスト5(順不同) ◎13歳のハローワーク 著者 村上龍 自分の人生は自分で決める。そのためには経済的に自立する。自分の好きな仕事で経済的に自立し、自由を獲得する。好きな職業なら何時間でも働ける。 コッポラ監督との出会いや、仕事に関するたくさんの書き下ろしエッセイ、そして・・・。
◎標的 Longshot 著者 ディック・フランシス/菊池光訳 主人公は元サバイバルのプロで新進の作家。高名な調教師の伝記を書かないかという依頼を受け、住み込みで執筆を始めた。 ◎海浜棒球始末記 −ウ・リ−グ熱風録− 著者 椎名誠 奄美大島の海岸を歩いていたら、土地の人々が野球をやっていた。バットはそこらで拾った棒切れらしい。球は、網についている"浮き球"だった。 著者 赤瀬川原平 藤森照信 他 路上観察学会編 1986年『路上観察学会』が発足し、新しい学問として『路上観察学』が誕生した。街中の建築物などに付着した無用の長物を観測する『超芸術トマソン』、『西洋館・看板建築』の探索、『マンホールの蓋』の調査。
◎綿の国星 著者 大島弓子 人間になれると信じている生後2カ月の小猫。名前は須和野チビ猫。彼女は、フリフリのエプロンドレスを着ている。
CINEMA-2003年-勝手にベスト5(順不同) ◎浮き雲 Kauas pilvet karkaavat/Drifting Clouds 監督 アキ・カウリスマキ 不況にあえぐフィンランド。市電の運転手の夫とレストラン給仕長の妻は、テレビも買って幸せに暮らしていたが、夫は市電の赤字による人員削減で解雇されてしまう。間もなく妻の方も失職。途方に暮れた二人は、仕事を探し回る。夫は短い尻尾の犬を抱いて仕事を探すが・・・。 ◎パリ・テキサス Paris, Texas 監督 ヴィム・ヴェンダース 荒涼としたテキサスの砂漠を歩く中年の男が、ガソリン・スタンドで行き倒れた。4年前に妻と息子を残したまま行方不明になっていた男とわかり、弟が引き取りにやってくる。弟は男の息子を育てていた。記憶を失いかけていた男は、やがて息子と連れ立って妻を探す旅に出る。ヒューストンの下町の「のぞき部屋」で・・・。 ◎八日目 Le Huitieme jour 監督 ジャコ・ヴァン・ドルマル 施設に預けられているダウン症の青年。仲間が家族の迎えで一時帰宅する中、彼には誰の迎えもなく一人で歩き始める。一方、妻子に逃げられた銀行員が自殺するつもりで車を暴走させて犬を轢き殺してしまう。驚いて車から出るとそこに青年がいた。青年は「ママの家に連れて行って」と・・・。 ◎ネフュー The Nephew 監督 ユージーン・ブレイディ アイルランドの島に住む男のもとに、アメリカに移住した妹の息子がやって来た。初めて会う甥は17歳、黒人との混血だった。甥は必死に島の生活に慣れようとするが、島の住民からは怪訝な眼で見られる。彼は、母がこの島を出て行った理由を調べ始める。20年前に島で起きた出来事とは…。
◎秋菊の物語 The Story of Qiu Ju 秋菊打官司 監督 チャン・イーモウ 中国北部の農村。秋菊の夫が、小さなトラブルから村長に股間を蹴られてケガをした。反省の態度のない村長に怒った秋菊は、身重の身で義妹と一緒に郡の役場や市の役所に行って相談する。金は払っても尊大な態度を改めようとしない村長に対し、あくまでも謝罪を求める秋菊は・・・。 映画「美しい夏キリシマ」を見ました。 1945年夏、宮崎の霧島地方。主人公・中学三年の少年は訳あって厳格な祖父たちと暮らしている。 “美しいキリシマの夏”に異物である兵隊、戦闘機をかぶせる。しかし、それらを圧倒する木々、山々、田圃。当時の風景にするために、戦後日本に入ってきた外来種の雑草を抜いて景色を作っていったという。 そして、なんといっても俳優・柄本佑17歳の存在。監督に「彼なしでは成立しなかった」と言わせたそうだ。俳優・柄本明の息子で、その面影もある。 「キネマ旬報」の2003年度ベストテンで作品賞、監督賞など3部門を受賞。「日本映画 第1位になった」と今日の新聞に発表された。 「美しい夏キリシマ」 監督 黒木和雄 |