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     不来方のお城の草に寝ころびて 

     空に吸はれし

     十五の心


初出「スバル」明治43年11月号

 不来方のお城の草に寝ころんで、はるかなる大空に夢を託した十五歳の日よ。あの少年のころが懐かしく思い出されることだ。

(「石川啄木必携」岩城之徳・編)


 二年に進みて丁級に入る。復(富田)先生の受持たり。時に十四歳。漸く悪戯の味を知りて、友を侮り、師を恐れず。時に教室の窓より、又は其背後の扉より脱れ出でて、独り古城趾の草に眠る。

 欠席の多き事と師の下口を取る事級中随一たり。先生に拉せられて叱責を享くる事殆んど連日に及ぶ。

(石川啄木「百回通信」)


           Sprawled out on the grass

           at Kozukata Castle,sucked up

           into the skyーMy heart at fifteen  

 (大岡信「対訳 折々のうた」)



 草いきれと光の中にさまざまな夢を結んだあの時の「十五のこころ」は、その後何処へ去って行ったのであろうか。過ぎ去った時間の切れ端を現在の中に探す感傷が、歌のテーマになっている。

(上田博「石川啄木歌集全歌鑑賞」)

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