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啄木行事レポート

「啄木」百年展 

もりおか啄木・賢治青春館 第九回特別企画展 

「情熱の啄木研究家・吉田孤羊の横顔」

盛岡てがみ館 第13回企画展 


「啄木」百年展

   --ペンネームの変遷にみる石川啄木の青春--

もりおか啄木・賢治青春館第九回特別企画展 

     2004年4月8日(木)〜5月9日(日) 

・玉山村渋民に生まれた石川啄木は、盛岡高等小学校(現下橋中学校)・盛岡中学(現盛岡一高)・新婚時代と、約10年間を盛岡で過ごした。
 
・盛岡中学時代に本格的に始まった創作活動は、校友会雑誌や地元紙「岩手日報」への投稿から全国誌「明星」へと発展。
 
・約百年前の啄木の青春時代を、翠江・麦羊子・白蘋・ハノ字・啄木というペンネームの変遷とその作品などを通じて紹介。

 


  
青春館の石門をくぐると100年前の世界

○啄木の青春・恋

 2階展示ホールには、啄木の青春が詰まっていた。

・略年譜は啄木に関連する事柄とともに、「盛岡-仙台間に郵便馬車開設」「県内各所に天然痘発生」「盛岡に初めて電灯ともる」など、盛岡市や岩手県内の出来事も織り込んであり、その繋がりが興味深かった。
 
・ペンネームは、翠江<碧濃き河>・麦羊子<毛の繁る夏の羊>・白蘋<白い浮き草>・ハノ字<白という字を音であらわしカタカナに>・と変遷していった由来。
 
・一(はじめ)と節子の恋はカルタ取りにうち興じたことで深まった、などの興味深いことがらが資料の解説、写真とともに並んでいた。
 
・中でも、書簡展示が面白かった。

○美しい文字の啄木書簡

    ----小林花郷(茂雄)宛

明治35年(1902)7月20日
 
・文字の横画は、やや右上がり。乱れのない落ち着きのある文字。
・楷書とまではいかないが、一文字一文字が切れている。
・墨継ぎが目立たないほど、墨色は濃いめに揃っている。
 
明治35年(1902)11月18日
 
・横画はほぼ平行。整った文字。
・上記の手紙より4カ月後になるが、「この間に何があったのか」と思うほど筆跡が大人びている。
・平仮名は繋がり気味。
・書き出しは横から覗いてみると、一線になってほとんど上下していない。
 
明治36年(1903)12月13日
 
・横画はやや右下がり。行書・草書混じり。
・連綿とともに、一行の中の左右への揺れも美しい。
・ギリギリにかすれてからの墨継ぎが快い。
・書き出しの高さは上下していて、余白を十分意識している。
・全体に動きがある。


「情熱の啄木研究家・吉田孤羊の横顔」

      〜そのコレクションから〜

盛岡てがみ館 第13回企画展 

2004年2月1日(日)〜4月19日(月) 

 

てがみ館のホールウインドウ

啄木研究の第一人者「吉田孤羊」にスポットをあてる。
 
孤羊の集めた膨大な資料の中から、書簡、書籍、雑誌類などを展示。
 
◎金田一京助 封書 昭和4年(1929)5月27日
 言語学者・金田一京助の手紙。自分の原稿の中で、啄木のことを「知友」と表現し たその理由について、本心が詳細に述べられている。
 
◎田子一民 封書 昭和9年(1934)5月12日
 
◎柳田國男 はがき 大正14年(1925)7月19日

てがみは時代の息吹を伝える遺産
(雰囲気をカシャッ!
 --館員の許可をいただいて撮りました)

○長女・京子の素顔を伝える文字

 啄木の長女・京子のハガキがあった。吉田孤羊宛で昭和4年9月21日付。

「(前略)私、病気をしまして、もうとても駄目らしかったのですが、父さんの留守に死んだら、子供等がかあいそうと、神様?が思召したと思えて、どうやらたすかりました。
(中略)何故となしに、孤羊さんのお話を(お父さんの)おきゝしたいと思って居ります。まだまだ、しらない事がたくさんある様で。(後略)」

 1906年(明治39)啄木20歳。12月29日 長女京子誕生。「・・こひしきせつ子が、無事女の児一可愛き京子を産み落したるなり。予が『若きお父さん』となりたるなり。天に充つるは愛なり。」と喜びを記した啄木。

 1907年(明治40)1月2日の日記には「・・かねてよりせつ子と共に撰びおきしなれば「京子」というに決すべし。「京」の字、みやびにして優しく美しし。我が友花明金田一君は京助といふ名なり。この友の性と心と、常に我が懐しむ処なれば、その字一つを採るもいわれ無き事にあらじ。」 と、京子の名前の由来を記している。

 こんなに愛されて育った京子だが、5歳で父を、6歳で母を亡くした。
 そして、このハガキを書いた翌年、自らも24歳で亡くなってしまう。

 やさしく柔らかい京子の文字を見ていると、《確かにてがみはその人の素顔を伝える第一級の遺産だ》と感じた。

 

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