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啄木文学散歩

東京都:目黒区 日本近代文学館


 

 日本近代文学館は、東京都目黒区の駒場公園内にある。近代文学関係の資料を収集・保存するため、1967年に日本初の近代文学総合資料館として開館した。資料総数125万点におよぶ。

 通常展「近代文学の名作 作家の手稿 I」を見た。


  

「日本近代文学館 東門」

静かな佇まいの門
東京大学教養学部に隣接

  

《通常展》

近代文学の名作 作家の手稿 I

期間  2009年12月5日〜2010年3月20日(土)まで
観覧料 100円

 作家の原稿、あるいは草稿を眺めると、その肉筆を通して作家活動のなまなましい現場をかいま見、原稿と作者との直線的な結びつき、あるいは意外性にも気づかされ、活字では味わうことのできない楽しみ、おもしろさに遭遇します。(出品リストより)

 

  

               「掲示板」

○ 出品作家

 森鴎外「舞姫」、坪内逍遙「オセロ」、二葉亭四迷「平凡」、夏目漱石「吾輩は猫である」、樋口一葉「たけくらべ」、有島武郎「或る女」、野口雨情「赤い靴」、北原白秋「おかる勘平」、 志賀直哉「暗夜行路」、谷崎潤一郎「細雪」、石川啄木「雲は天才である」など32人の作家の肖像写真と、その名作をレプリカや初版本複刻によって展示している。

  

       

「文学館前の広場」        

左の階段を上ったところが正面入口    

 

○ 石川啄木の展示

『一握の砂』
『あこがれ』
『悲しき玩具』
『呼子と口笛』
『雲は天才である』原稿 土岐善麿寄贈
  

・『一握の砂』カバーはシンプルな活字文字。

・『あこがれ』カバーは青一色。

・ 『悲しき玩具』カバー絵はひょっとことおかめが背中合わせになっているようなデザイン。

・『呼子と口笛』の扉に描かれている絵

 「日本近代文学館所蔵のこの未完の詩集は大学ノートを用いた手製であり、扉絵はそのノートの透かしを扉絵にふさわしい大きさに拡大しつつ啄木が模写したものである」。元の絵は「十九世紀に、カール・マルクスが使ったノートの表紙に、その絵があった・・・」。(『啄木 六の予言』近藤典彦 著 ネスコ発行)

 女神像を囲む三重の楕円は小さく波打ち、また、きっちりとレタリングされた『呼子と口笛』の題字に、啄木の絵に対する興味やレタリング技術の高さを思った。

・『雲は天才である』の原稿は、直しのない整った文字。太い線、細い線がリズムを持って美しい。

【その頃の啄木の日記より】

明治四十一年日誌

神無月 十月一日
 創作の興が少し動いて来た様な気がして、古く書いたものなどーー“雲は天才である。”の未定稿など取出してみた。いざ書かうと思ふと、ペンがダメになつてゐる。原稿紙も少い。これで折角の思立も、心が索然となつて水の泡。財布には五厘銅貨が二枚と電車の切符が一枚。
 窓から見下してると、蜻蛉が飛んでゐる。盛岡が恋しかつた。与謝野氏からハガキ。

(『石川啄木全集』 第五巻 筑摩書房 1986)

 

 書家の榊莫山に「・・若い啄木に、書を習った気配はみつからぬ。にもかかわらずこの手紙にみせる書の風姿は尋常ではない。造形のモダンさを心得て、毛筆のかなり高いところを持って、この軽快さと造形のたしかさをみせる啄木は、生まれつき天性の造形感覚をたっぷり持ちあわせていたにちがいない。(榊莫山「啄木の書」國文学1998.11)」と評された。

・夏目漱石や幸田露伴、武者小路実篤、太宰治、野上弥生子らとともにガラスケースに並ぶ啄木を眺めるのは、覗き見しているようなドキドキ感がある。

 

「日本近代文学館絵はがきより」

  

○ 閲覧室の利用は300円

・《石川啄木・土岐善麿 コレクション》

 1978年、善麿氏、健児氏寄贈。865点。啄木資料は「一握の砂以後」「雲は天才である」などの原稿、書簡ほか95点。善麿資料は著書105冊、茂吉、新村出ら112名の書簡。

・肉筆資料は「特別閲覧」となり、事前に予約が必要。

・ インターネット利用

 直接訪問しなくても、インターネットで所蔵雑誌検索ができ、コピーサービス(有料・郵送)も受けられる。

 所蔵の資料写真の利用もできる。石川啄木で検索をすると、鮮明な写真を見ることができる。

「1Fホール」

(許可を得て撮影)

○ 野口雨情「赤い靴」歌詞原稿のこと

 

「赤い靴」

赤い靴はいてた女の子
異人さんにつれられて
行っちゃった

横浜の埠場から船に乗って
異人さんにつれられて
行っちゃった

今では青い目になっちゃって
異人さんのお国に
いるんだろ

赤い靴見るたび考える
異人さんに逢うたび
考える

『ウィキペディア(Wikipedia)』によればこの歌には、以下の5番があるといわれている。

  「産まれた 日本が 恋しくば 異人さんに 頼んで 帰ってこ」

と紹介されている。

・雨情自筆の原稿を読むと

  「生れた日本が 恋しくば 異人さんにたのんで ○って来た」

のように読めた。(○は判読できず)

(2010年-春)   


「日本近代文学館」

・東京都目黒区駒場4-3-55(駒場公園内)

・電話 03-3468-4181

・アクセス

 京王井の頭線 駒場東大前駅(西口)徒歩7分
 小田急線 東北沢駅 徒歩10分

 


隣にある東大駒場「101号館」

 

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